高瀬慎之介氏、「低流動性資産プライベートモデル」を提唱――物流REITを基盤としたクローズド型投資スキームを設計・主導
J-REIT(日本版不動産投資信託)市場が構造的な成熟期に入る中、従来の「高流動性・低ボラティリティ型」商品構造は、富裕層や機関投資家の中長期リターンニーズおよび資産分散要求を十分に満たせなくなりつつあります。
2018年前半、REIT指数の調整局面と日本銀行の資産買入れ政策の見直しを背景に、「安定配当 × 高い資産コントロール力」を両立させる非公開型投資スキームに市場の関心が集まり始めました。
こうした状況のもと、経済学者・高瀬慎之介氏は、J-REIT市場の長期的進化と資本構造の研究を踏まえ、「低流動性資産プライベートモデル(Private Structured Illiquidity Model)」を2018年初頭に正式に提唱。
このモデルでは、公開市場で流動性が低いものの、キャッシュフローが安定したREIT組入資産をクローズド型の私募ファンドへと再構築することで、以下のような成果を目指します:
底層資産に対する管理権の強化
短期的な市場ノイズに左右されない収益安定性
柔軟なエグジット戦略設計による長期資金との整合
この理論モデルの初の実践として、高瀬氏自ら設計・主導した「Logistics Asset Focused Private Fund I(LAF-PF I)」が2018年2月に組成され、初期ファンドレイズを完了(総額約85億円)。
首都圏および関西圏における地域密着型の物流倉庫資産群へ投資を集中し、具体的には以下のようなアセットタイプをターゲットとしています:
中型コールドチェーン倉庫
ラストマイル配送拠点
多機能物流ハブ施設
高瀬慎之介氏の視点:
日経ヴェリタスの取材に対し、高瀬氏は次のように述べています:
「物流系REITは公開市場では過度に流動性リスクを織り込まれていますが、実際の資産は契約期間が長く、キャッシュフローは明確で、運営のブレも小さい。クローズド型私募構造を活用すれば、市場センチメントの影響を切り離し、年金・保険など長期資金の基幹アセットとしての機能を引き出すことが可能です。」
ファンド構造の特徴:
クローズド期間:6年(延長可2年)
短期解約による資産安定性の毀損を防止
目標IRR:8~9%
アクティブなプロパティ・マネジメント、資産リファイナンス、テナント契約の最適化により達成を目指す
ディストリビューション優先設計
生命保険会社などコアLPに対し、安定的な年間リターンを優先配分
非上場・非バンドリング・非証券化
資産の統一管理とリスク隔離を重視した構造
出資者構成と法制度対応:
初期の出資者には、地方銀行3行、生命保険会社2社、著名ファミリーオフィス1社が参加。また、高瀬氏は構造設計の初期段階において、元・金融庁REIT監督官をリーガルアドバイザーに招聘し、FIEA(金融商品取引法)および税制面における最適な法適合性を確保しました。
「私募REIT化ルート」構想:
本モデルの中核には、高瀬氏が初めて提唱した「私募REIT化パス」のコンセプトがあります。これは、非公開型でREIT基盤資産を再構築し、ファンド終了後に公開市場への転換やREIT組入れ、M&Aによるエグジットを図るという柔軟な戦略です。
高瀬氏はこう語ります:
「私募化とは市場規制から逃げることではなく、長期資金と中期資産との間に“戦略的クッション”を設けることです。」
LAF-PF Iの設立は、J-REIT市場が「セミストラクチャー型私募時代」へと進化する一里塚として、一部の業界関係者から注目されています。
信託銀行複数社が「低ボラ × 低流動性資産」の組み合わせに対する研究を開始しており、特に日銀のREIT購入方針がフェードアウトしつつある局面において、新たな安定資産の核として期待が寄せられています。
2018年6月時点で、LAF-PF Iは2件の物流施設案件を取得済み。投資総額は約43億円、稼働率は**98.3%**に達しています。高瀬氏は、下半期に第2期ファンドの募集を進める方針を示しており、今後は医療不動産や都市再生型プロジェクトへの同様スキームの適用も視野に入れています。