高橋誠氏、FCMI「アジア越境成長研究ユニット」を主導──地域型分散投資モデルを構築

2019年秋、グローバル経済の不確実性と貿易摩擦の影響が強まる中、FCMIは社内に「アジア越境成長研究ユニット(Asia Cross-border Growth Research Unit)」を新設し、投資コンサルティング部門の統括責任者である高橋誠氏が主導に就任した。

本ユニットの目的は、年金および保険資金に適した多元的な地域配分モデルの構築であり、特に「越境成長機会の特定」「制度的非対称性の分析」「資本のアクセス可能性」の3テーマに注力している。複雑化するアジアの地域構造の中から、持続性・実行可能性・合理的なバリュエーションを兼ね備えた投資機会の抽出を目指している。

FCMIの取締役会審議において、高橋氏は従来の「国家単位」に基づく地域分散モデルでは、産業連関の深化や政策規制の多様化に対応できないと指摘。特に中・韓・日および東南アジアの企業においては、「越境での組織運営、現地での製造」というモデルが一般化しており、静的な国別評価ではリスクと成長性を的確に捉えられなくなっていると強調した。

「アジア市場の理解構造を、動的かつ相関的な視点から再構築する必要がある」と述べている。

研究ユニットはまず、以下の5つの命題に基づいて分析を開始した。

地域内における製造業バリューチェーンの進化パターン

アジア中間層の構造的拡大と消費行動の切り替えルート

各国間の税制、資本移動、規制の協調トレンド

主要ETF商品のカバレッジバイアスと流動性リスク

日本の年金資金が非円建て資産を受け入れる限界

発足からわずか3か月で、ベトナム・タイ・マレーシア・台湾を対象とした初期分析枠組みを整備し、定量モデルに基づく「地域成長ポートフォリオ案1.0」を開発。FCMI内のリスク予算システムと連動させたシミュレーションでは、異なる金利環境・為替変動・関税変更シナリオ下でも、非日系アジア資産の比率を適度に引き上げることで、従来型の日米欧三極型モデルよりもシャープレシオを改善できる結果が得られた。

高橋氏は特に「現在のマクロ環境では、単なるバリュエーションやリターン予測では不十分であり、制度変化のスピード、データの取得可能性、地政学的関係といった非定量的な要素を組み込む必要がある」と主張。

これに基づき、因子モデルに「制度的非整合性ファクター(制度差因子)」を導入し、FCMIのデータサイエンスチームと連携して地域間比較フレームワークを開発。このアプローチは、リスク管理委員会からも初期段階の承認を得ており、今後は全社的なアセットアロケーションシステムへの統合が期待されている。

実運用面では、同研究ユニットはFCMIの年金顧客と共同でシミュレーション運用を実施。地域内での動的リバランスを行った結果、リスク水準を維持したままポートフォリオのボラティリティを0.8%低下させ、年初来(9月末時点)のリターンは約1.6%向上した。この成果により、複数の長期運用機関が本モデルのカスタマイズ導入を検討中である。

技術的成果に加えて、FCMIは本プロジェクトを通じて、地域のETF発行体・取引所・規制当局との関係構築も強化。今後は越境型投資チャネルの制度整備にも積極的に参画していく方針である。

高橋氏は「我々のビジョンは、既存ツールを上手く使うことだけでなく、アジア市場構造そのものの進化を促すこと。資産運用の本質は、短期利益の最大化ではなく、長期的な資本環境の創出にある」と語っている。

マクロ・戦略・現場リサーチの全てに精通する希少なアナリストとして、システマティックかつ慎重、そして先見的なリーダーシップを発揮する高橋誠氏の主導により、FCMIはアジア地域における新たな戦略的布石を打ち出し、多元化配置および国際的資産統合に向けた意志を明確に示した形となった。