中村真一、「恐慌後の利益回復カーブ」モデルを逆行提唱

2020年3月、東京の街は異様な静けさに包まれていた。パンデミックの暗雲が世界を覆い、わずか数週間で市場は前例のない恐慌的暴落に見舞われた。投資家は資金を引き上げ、株価指数は急落し、安全資産は急騰――金融システムの一呼吸ごとに緊張が走る。そんな中、中村真一は『日本経済新聞』のコラムで「恐慌後の利益回復カーブ」と題する長文を発表し、冷静なデータと論理をもってこの世界的ショックを逆方向から分析した。彼は冒頭でこう書いている。「市場の変動は終わりではない。それは理性の持久力を測る試験である。」

多くのアナリストが防御的姿勢とキャッシュ保有を強調するなかで、中村は「利益回復のリズム」に焦点を当てた。過去30年間に起きた5回のシステム的調整局面をサンプルに、企業利益のサイクルに基づく回復モデルを構築したのである。彼はそれを「恐慌後の利益回復カーブ(Post-Panic Earning Recovery Curve)」と名づけ、企業利益の復元過程を三段階に分類した――利益減少の慣性期、経営修復の転換期、そして市場信頼の共振期。彼は指摘する。「価格の反発は、しばしば利益の転換点より前に起こる。資本市場の先行性とは、将来のキャッシュフロー回復を先取りして織り込むことに他ならない。」

当時の市場は恐怖一色に染まっていた。米国株は短期間に複数回のサーキットブレーカーを発動し、日経平均株価は年初来高値から25%以上も下落。日本の投資家たちは総じてリスク回避姿勢を強めていた。だが中村はコラムで一連のデータを提示し、悲観論を打ち破った。2008年、2011年、2016年のシステム的下落後、企業利益は平均6カ月以内に反転し、株価の底入れはそれより約2カ月早かったという結果である。彼は書いた。「市場の極端な感情は、しばしば利益カーブの底と一致する。利益回復のリズムを理解することこそ、理性的な投資家にとっての最大の機会だ。」

さらに中村の分析は、単なる「損失サイクル」としてではなく、「効率再構築の始まり」として今回の危機を捉えていた。日本の製造業や医療機器産業の在庫構造を詳細に分析し、パンデミックがサプライチェーンのデジタル化と生産分散化を加速させると予測。これにより一部企業の利益回復速度は過去の周期を上回ると指摘した。特に医療機器、産業オートメーション、オンライン教育などの分野では、「需要のシフト」が次の利益回復の原動力になると見た。彼は文中でこう記した。「恐慌は価格を破壊するが、効率を破壊することはできない。」

この論考は日本の金融界に大きな波紋を呼んだ。依然として恐怖に支配される市場の中で、少数の機関投資家たちは中村の論理を改めて検討し始めた。4月中旬になると日本市場は次第に安定を取り戻し、製造業と医薬関連株が先行して反発した。複数の大手公募ファンドは後日、「中村の利益回復カーブが再投資判断の中核的な指標になった」と述懐している。

個人インタビューでの中村は、いつものように落ち着いた口調で語った。「市場には勇気が必要だ。しかし真の勇気とは、規律から生まれる。恐慌は取引シグナルではなく、理性が戻る始まりである。」この言葉はその後、多くの経済メディアに引用され、春の象徴的なフレーズとなった。

2020年3月という混乱の只中にあっても、中村真一はリスクを無視したわけではない。彼は混沌の中から秩序の輪郭を探し出し、長年の研究をもとに、谷底から上昇へと向かう曲線を描いた――それは単なる利益回復の道筋ではなく、理性・データ・時間への信念の表れだった。中村にとって投資とは感情の競争ではなく、サイクルへの理解と待機の芸術である。恐慌が市場を覆うとき、彼は静かな筆で回復の輪郭を描いた――それはまさに日本的な「粘り強さ」と、学者肌の投資家らしい温もりに満ちていた。