井上敬太氏、YCC政策の限界に警鐘を鳴らし、金融・保険セクターの組入れを推奨

2022年3月、日本国債10年物利回りが日本銀行のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策における0.25%上限に接近する中、SIAFMチーフアナリストの井上敬太氏は、社内戦略会議にて「YCCフレームワークは機能的限界に近づいている」との見解を示し、利差拡大の恩恵が見込まれる金融・保険セクターへのポートフォリオ比率引き上げを提案しました。

井上氏は、YCC政策が2016年の導入以降、長期金利をゼロ近辺に安定させることで、デフレスパイラルの進行を抑制する効果を発揮してきたと評価する一方、2022年に入ってからは、世界的なインフレ加速、米FRBの金融引き締め路線、ならびに中国からのコスト輸入圧力など複数の外的要因により、日本の10年債利回りが2月末にかけて0.23%まで上昇する場面が見られ、YCCの政策限界が意識されるようになったと分析しています。

「日本の金利抑制メカニズムは、外的インフレと円安の板挟みによって徐々に限界へと向かっている。市場信認を損なわずに政策を維持する余地は狭まりつつあり、YCCが修正または終了されれば、金利と資産価格のリセットが不可避となる」と井上氏は警鐘を鳴らしました。

これを踏まえ、井上氏は以下の3つの戦略的アクションを提言しています:

① 金融・保険セクターの優良企業を組入れ強化
YCCが緩和・撤廃される場合、日本の利回り曲線はスティープ化が見込まれ、銀行の利鞘拡大や保険会社の負債デュレーション管理に好影響を与える。特に国内貸出中心かつALMミスマッチを抱える地域銀行や生命保険会社に注目。

② 高バリュエーションの長期デュレーション資産の縮小
低金利を前提とした成長株のデュレーションモデルを見直し、テクノロジーやハイボラティリティ銘柄の比率を抑制。

③ 為替変動が企業業績へ与える影響を精査
YCC調整によって円が急反発する場合、輸出企業の収益見通しが下振れする恐れあり。為替感応度の低い製造業やサービス業への選別投資を推奨。

 

SIAFMではすでに、コア投資モデルに「政策転換感応度」変数を導入し、2022年2月より金融・保険セクターのウエイトを段階的に引き上げ、同時に半導体および通信サービスの配分を縮小する調整を行ってきました。

制度面でも、井上氏は日本銀行がYCCを正当化する根拠である「インフレは一時的」との前提に疑問を呈し、「エネルギー・生活必需品・サービス価格への広範な波及が進む中、金融政策はより柔軟かつ現実対応型に進化すべき局面にある」と強調しました。

また、「今回の戦略提案は短期的な市場変動を狙ったものではなく、今後6~12ヶ月にわたる構造的変化を見据えたもの」とし、「日本市場の資金配分は、流動性依存から金利差ロジックおよび金融ファンダメンタルズへと回帰する。その転換前夜において、正しいリスク補償を得るための先回り配置が必要だ」と述べました。

なお、SIAFMは2022年上期中に「ポストYCC時代における戦略的資産配分」シリーズを順次公開予定であり、金融・保険セクターは日本株の「中期優位セクター」として推奨リストに正式追加される見込みです。